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タイトル、撮影現場のトリビア

映像制作の現場は職人仕事だけに、独特のルールが存在するようです。「ようです」というのも、映像業界にいると、それが当たり前になっていて、あまり違和感を感じないというのが正直なところだからです。ここで、業界の外にいる人から指摘された様々な情報を書き記してみたいと思います。これから映像制作会社に映像制作依頼を出すのでしたら、知っておいて損はない話であると思います。

プロデューサーとディレクターの権限

プロデューサーやディレクターという人は、現場では相当な権限を有しています。これは会社組織の中での立場や役職とは関係なく、プロデューサーやディレクターであるというだけで、その制作会社の社長でも口出しできない位の強力なものだったりします。
平社員のディレクターに対して、社長が口出ししない状況が、外部の人からは相当違和感を持って受け入れられるようです。
これは、「現場と組織は別」という考え方に根ざしたものです。例えば制作現場の進行においてのトップはプロデューサーですし、作品の内容に関してのトップはディレクターです。しかもこういう人たちは専門の職業教育を受けている人ですから、社長がそうした専門的な教育を受けていない場合などは、もう口出しなどできようもないという状況になります。
大手になればなるほど、この傾向は強くなります。社長が現場のたたき上げである確率は会社が大きくなればなるほど低くなるので、こういう結果になるのでしょう。
会社としては社長を頂点とした経営を行なうのが常識ですが、制作の現場では、プロデューサーを頂点とした進行の要素と、ディレクターを頂点とした演出の要素が絡み合っているので微妙なバランスの上に成り立っているものです。ここに経営から口出しするのはいささか乱暴な話と考えている現場人は多いでしょう。
こうした性質から、社長も口出しできないという状況が発生するのです。でも安心してください。みんな仲はいいですし、これでけっこううまくいっているのです(笑)

台本とナレ原は別もの

台本には「Na」と書かれている欄があり、もちろんナレーションを想定している文章も記入されています。しかし、このナレーションがそのまま読まれることはありません。台本というものは撮影の前に書かれるものですから、撮影と編集が完了してから、必ずナレーション原稿というものを書いて、ナレーターはそれを読むのです。
映像制作に初めて参加する方々によく言われるのが、この「台本とナレーション原稿」の違い。確かに台本通りに撮影して編集すればそのまま読めるのですが、台本はあくまで台本。現場判断でもっと面白くなるなら、台本から内容を変更するなんてのはざら。
ですから、実際の編集上がりに合わせて内容を整えて、ナレーション原稿を書くというのが主流の作業手順になっているのです。

カンペは縦書き

撮影現場によくあるカンペ。これって実は縦書きが王道なんです。今はパソコンで書くことが多いので、どうしても縦書きは減ってきていますが、それでもキチンとした教育を受けているディレクターさんや制作会社の作品のカンペは今でも縦書きが主流です。
理由は出演者の目線の動き。横書きのカンペですと、どうしても目の黒目が横に動いてしまうんです。これってけっこう気になるものです。しかし縦書きのカンペなら目線の移動が縦になるのであまり気にならないんです。こういう小さな事からでもディレクターの知識や会社の教育水準、そして意識の高さが感じ取れるものです。よく観察してみましょう。

映像のナレーション特有の事情

ナレーションでは使わない言葉がたくさんあります。放送禁止用語なら、常識的に考えて使わないことは分かるわけですが、「耳で聞いてわかりにくい言葉は使わない」というルールはわかりにくいですね。
考えてみると、映像というのは本と違って、時間で流れていくので、わかりにくい言葉が一つでもあると、そこで視聴者の理解が止まり、それより先の内容を見るというモチベーションを失う場合もあるのです。ですから、耳で聞いてハッキリと内容が分かる言葉のみを使うという暗黙のルールが存在します。
例えば「大事」はあまり使いません。使うなら「大切」を使います。
「〜より」という言い回しも使いません。「比較」なのか「from」なのか「since」なのか、これだけ耳で聞いたら皆目見当がつかないからです。例えば、「今年より」という言葉。これではわかりません。プロなら「今年から」「今年と比べて」というように、耳で聞いた瞬間にわかるように言葉を選びます。
丁寧すぎる言い回しも避けます。というのも、言い回しがまどろっこしくなって耳で聞いてアタリが悪いからです。
ナレーション原稿は本当にプロとアマチュアの書いたものが一目瞭然でわかる分野です。たとえ日本語のプロが書いたとしても、映像特有の事情を知らないで台本やナレーション原稿は書けません。そのために皆さん長い修行をして台本を学んでいるのです。
ナレーションは耳で聞いてハッキリと伝わるように。これは基本です。

台本は読んで分かるものである必要はない

台本は日本語で書かれているのではなく、映像文法で書かれているものです。あくまで映像の雛形ですから、映像の文法で書かれていないとそれを元にして撮影しても映像として成り立たなくなってしまいます。
映像文法で書かれた台本は、そのものを読んでも意味がイマイチ分かりにくかったりするものです。しかしそれでいいのです。
台本を書く時は、「この情報は映像で説明するからナレーションはいらないな」とか、「映像でどうせスローモーションで見せるから分かるだろう」というように、編集が終わった状態を想定しています。ですから、台本だけですと、その文字面を読むだけなら、情報が足りない場合も出てくるのです。
このように、普通の日本語と映像で使われる言語はまったく違うものです。ですから日本語の上手な人でも、おいそれと台本を書くことはできませんし、プロから見たら、「おかしいな」とすぐに分かってしまうのです。
台本を書くときは映像として完成した時を想像しながら書く。そのためには映像文法を理解する必要がある。これが基本になります。